旧宮塚町住宅

- 現在は店舗が入居している
- 二階に続く階段
- 階段の裏側
- 広い敷地の大半は、現在は庭に
■旧宮塚町住宅
■兵庫県芦屋市宮塚町12−24 宮塚市営住宅2号棟
■竣工:1953年
■設計、施工:不明
■石造・一部コンクリート
船場ぶらり近代建築の旅、番外編。大阪を飛び出して、お隣の兵庫県のレトロ建築です。
JR芦屋駅から海側へ徒歩数分。阪神芦屋駅と打出駅の間くらい、マンションの立ち並ぶ住宅街に突如としてレトロな景観が出現します。
この旧宮塚町住宅は、全国的にも珍しい石造りの二階建て集合住宅。つい最近までじっさいに市営住宅として、64年にも渡って利用されてきましたが、市営住宅整理統合のため2017年にその役目を終えました。
石造りの建造物で現存している物自体が全国的にも少なく、芦屋市はその歴史的価値の高さからリノベーションをして保存することを決定。耐震補強などを施したうえで、入居する入居するテナントを募集し、2019年にそのままの形を残しながら商業施設として生まれ変わらせました。
以前大阪のアクア堂島フォンターナにあった有名なティーサロン「ムジカティー」も、数年ぶりに喫茶部門を復活させ、この場所に本店移転という形を取っている模様。なにも知らずに通りかかったので、こんなところに無くなったはずのムジカが!?とびっくりしてしまいました。
石造り、と一言で言いましたが、具体的には日華石(にっかせき)という石で作られています。クリーム色の淡くやわらかな色味を帯びた、火山灰が固まってできたとされる凝灰岩です。石川県小松市でしか採掘されない貴重な石で(凝灰岩は白山によるもの)、軽くて通気性と除湿効果が高く、防火性にも優れていることで知られています。国会議事堂の内装のメイン材として使われており、報道番組で政治家が廊下でインタビューに答えている時に映る背景を彩っているのも日華石だそうです。
当時は目まぐるしい数とスピードで次々と集合住宅が作られていた時代。それらのほとんどはコンクリートで作られましたし、こと大阪ではお馴染み「文化住宅」と呼ばれる木造モルタル建てのアパートも数多く量産されていました。そんななか何故この宮塚町住宅が石積みで作られたのかというと、それはひとえに「謎」であるそう。市の記録にも詳細や経緯などが一切残っていないらしいです。
写真をご覧いただくと分かる通り、細部の作りにも拘りを持った仕様になっています。
例えば一階と二階はコンクリートで接続されていますが、この部分もあたかも石であるような見映えに加工されていますし、
すべての玄関が一段、石の壁に後ろに奥まっていてポーチのような作りになっているのも気が利いています。
一介の市営住宅の作りに到底見えない不思議な建築物。
お近くに寄られた際には立ち寄って見られては如何でしょうか。ムジカティーサロンも美味しいので是非!




